むいてない

 ルサンチマンと言えば聞こえはいいが、ようは負け犬の思想だ。夏、ヒグラシ、溶けたアイスクリーム、笛と太鼓の音。動かずともじっとりと汗をかく季節には、ふとあの頃の記憶が思い出される。終わりから始まった僕に怖いものなんて何もなかった。

 

 

住む家も無く、金も無く、最後に食べたムカゴとカエルのスープはすっかり消化されていた。飽食の時代とはいうが、捨てる食べ物にも値段がついてるって話だ。

都会がゴミ捨て場にしようと定めた最低の土地は、日本最低の最低賃金であり、その最低賃金が守られない最低の土地だった。日が昇る少し前から出勤し、流れる汗を拭くことも無くキツイ肉体労働を日が沈むまでこなす。手渡しで渡されるたった5枚の紙幣、それが人生で最初の仕事だった。

そうして生きていく中で、恵まれている者と、いない者とが判っていった。日本に生まれた時点で勝ち組とは、勝ち組のセリフであり、決して負け組みに吐いていいセリフでは無い。そんなセリフを、煌びやかな服とイヤリングで着飾った生活保護者が吐いたあの時から、自分の敵が明確にわかった。守られるべき弱い立場の者が、どうしようもない悪辣に見えてしまった。

 

 他人を利用して上にいく、他人をだまして上にいく、そういう人間がどうしようも無く嫌いだ。それは売名であり、それは詐欺であり、それは足をひっぱることでもある。ポケモン実況に蔓延るそれらにどうしようもない嫌悪を感じているから、きっと自分はその世界に絶望的に向いていないんだと思う。

 ザリガニの殻は固く剥きにくい。